dimanche 2 mars 2008

あるご老人のこと



大学の教室前の廊下にベンチが備え付けられている。まさに板だけのベンチで、クールが始るまでそこで待つのが日課になっている。そのペンチでいつも見かけるご老人がいる。白髪で髭がたっぷり伸びている痩せ型の方で、その場の景色にぴったりなのである。ベンチに新聞を置き、屈み込むようにして手にした鋏みでその中の記事を切り抜いている。最初はクールが始るまでのことかと思っていたが、どうもそれ以外には何もしていないようである。哲学科の廊下には霊感を与える何かがあるのだろうか。それは生きている証としての作業なのだろうか。いつも不思議に思っていて一度話をしてみようと考えてはみたが、一喝されるのではないかとの怖れからまだ直接話をするところには至っていない。その景色が日常の一駒になってしまったのか、大学を出ると記憶の彼方に消えていたが、なぜかこの日曜の朝に思い出され、書き留めておこうという気になった。


明日から3日間、パリ郊外の僧院で日仏の科学関連の会議がある。私は大学の関係もあり最初の2日間だけ出席する予定にしている。日本からは5-6人が参加するとのことなので、久しぶりにいろいろなお話が聞けるのではないかと楽しみにしている。



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