vendredi 13 novembre 2015

科学の会で哲学を話して

15 novembre 2008
 


今回の旅行の目的である会が昨日終った。発表内容のレベルの高さと日本ならではのホスピタリティに海外からの参加者も充分に満足して帰ったのではないだろうか。私は科学をする上での哲学的思考の重要性と哲学が科学に対して何ができるのかという両面からの解析を抄録として送っていたが、オーガナイザーM氏の先見性ある判断により発表する機会を与えられた。このような科学の会議で哲学が話題になることは前代未聞のことなので、どのような反応があるのか不安と期待をもって参加した。もちろん不安の比率が大きく、会で話題になっていることも考慮に入れながら発表直前まで考えを練った。

今回はこれまでに感じたことのない会場との一体感を味わいながら話すという貴重な経験をすることができた。発表がその日の最後でもあったので皆さんをエンタテインしなければならないという思いがあったが、最初から会場が予想通りの反応で答えてくれた。そして話が進むにつれて皆さんの集中から出てくると思われる静寂を感じ取り、はっとした。やがてそれはある種の満たされた気分に繋がって行ったが、これは生まれて初めての経験になる。

話を終えるとベルギーからのMB氏がやや激しい口調で、そんなことを言っても今の科学者は目に見える成果をあげるのに必死にならざるを得ない環境にあり、哲学的思考などしている時間などないのだと心からの叫びを上げると、海外からの参加者が主ではないかと思うが会場から拍手が沸いていた。彼のコメントは私の話に対する批判というよりは、哲学的思考、すなわち自らのやっていることを全体の中(より大きなフレームワーク)に入れ直して考えるという何をする上でも重要なことができなくなっている今の状況に対する彼らの苛立ちではなかったかと思う。あとでドイツの方が話してくれたところによると、特にベルギーとオランダでは研究をする上での資金を得るのが厳しい状況にあるとのことであった。

その他にも何人かの海外からの方から関連する科学的事実についてのコメントや全体の印象を聞くことができた。これから考えを深める上で大いに参考になるだろう。日本の方からも様々なコメントをいただいたが、私の耳に入ったという制限付きで概して好評であった。これからもこのような話を続けて聞きたい、あるいは積極的にいろいろなところで話(全国行脚?)をするべきではないかという予想もしない反応をいただいた。同様の会議はアメリカとヨーロッパでも定期的に開かれているが、日本版は彼らの一周先を行っているのではないかとの言葉まで聞こえた。まさに生身の異分野交流の醍醐味に触れる贅沢を味わった。

すべてが終わり、このような抄録を送ってよかったと思った。心の底から静かに溢れる満足感と同時に、科学発表の時には感じたことのない何かに対する使命感(ミッション)のようなものが芽生えているのを感じていた。それはそのままこれからの歩みを後ろからしっかりと支えてくれるのではないかという淡い期待感に変わっていた。


---------------------------------------------------
vendredi 13 novembre 2015


このような発表の最初の頃のエピソードになるだろう。

MB氏の顔を赤くした批判を今でも思い出す。

私が現役の時に今回の自分の話を聴いたとする。

その場合、それは理想論でしょう程度の反応か、気にも掛けなかったのではないだろうか。

こちらの人たちの「こと」に自ら参加するという性質にはいつも感心する。

そのような参加(アンガジュマン)の態度からしか、新しいものは生まれてこないのではないか。

ただ、日本にどっぷり浸ってしまうとそれは相当のエネルギーを要するだろう。

そのことは自らを振り返ればよく理解できる。


今年はテーズの準備もあり、外に向けての発信は不可能であった。

内に籠る生活が一段落すれば、このような活動を再開したいものである。

と同時に、これまでに蓄積されたものをさらに深める作業にも怠りがあってはならないだろう。

今回纏めたものは、考え着いたことのリストに過ぎないような気がしているからだ。


-----------------------------------------------
当時のコメント欄です


Commented by takako at 2008-11-15 03:59

飛行機で隣だった者です。遅くなりましたが長旅お疲れ様です。もうパリに戻られたようですね。講演はいかがでしたか? あの時の友人のすてきーは空耳ではないです。私も、新たに言語を習得なさろうとする姿勢とかそれをきちんと実現されているのとか、ほんとに素敵だと思いますし心底尊敬します。フランス語ほんとにややこしくて私は何度も挫折してるので… 文法を細かい規則と思っているから覚えられないのでしょうね。とてもいい刺激をもらいました、ありがとうございます。

ブログもこれから楽しみに拝見させていただこうと思います。一度では理解しきれなくて何度も読み返しそうです!

旅行会社の方に11月中旬からパリはクリスマスのイルミネーションが点灯すると聞きました。ちょっとずれてしまい残念です。機会がありましたら写真載せてください!

それでは大学院がんばってください。失礼します。


Commented by paul-paris at 2008-11-15 06:20

takako様 訪問ならびにコメントありがとうございます。

先日はお付き合いいただきありがとうございます。少々話し込みすぎたのではないかと心配しておりましたが、安心しました。旅行中ブログはお休みにするつもりで日々の写真をパリにしていますが、まだ日本です。

最後まで不安が付き纏っていた講演ですが、今日の記事に書いたようにこの会議に参加して本当によかったと思えるものでした。今は開放感で一杯です。

少々回りくどい言い方に溢れているかもしれませんが、これに懲りずにこれからもここを訪問していただければ幸いです。それからノエルのパリの町並みもここに載せてみたいと思います。

では、お勉強がんばってください。
そしてお友達にもよろしくお伝えください。





Aucun commentaire:

Enregistrer un commentaire