samedi 23 février 2008

Liguea 様からの再びの便り



2年程前にこのブログの前身であるハンモックの仏版に届いたコメントは、私にとっては衝撃的であった(2006-04-28)。Liguea 様の言葉は、今となってはその後を予言しているようにも感じている。そのコメントの中で、私と関係のある芸術家・哲学者として、ハイデッガー、フッサール、そしてカンディンスキーを上げていた。その意味は未だによくわからないが、ずーっと気になっている人たちである。今日、週末のせいもありのんびりしていたせいか、ハンモックにアクセスのあった記事を読み直していた時、彼からのコメントが届いた一月後にカンディンスキーについて書いたものがあった(2006-05-28)。その中で、カンディンスキーが自らの芸術を生み出す時に、「自分の内から真に湧き出るもの、それだけを頼りに描くこと」 という考えを基にしていたことを知り、自らに重ねているところが見つかった。同様の考えや見方が仏版ハンモックのどこかに顕れていたのだろうか。それを指摘していただいたことで私の目は大きく開かれたように感じている。さらに、昨年こちらに来る前にも心を打つメールをいただいたことも大きな力を与えてくれており(2007-05-27)、いつも感謝の気持ちを込めて難解な文章を読んでいる。


そして再び Liguea 様からメールが届いた。哲学の専門家だけあり、今回も複雑な文体と豊富な語彙が溢れるそのメールには、次のようなことが書かれてあった。
「昨年メールを出してからご無沙汰していましたが、私自身取り込んでおりパソコンに向かう時間もありませんでした。大変失礼いたしました。

今回あなたがフランスに来られたということに深く心を打たれております。もはやフランス人でさえ、このフランスの地に立ってフランス語やフランス文化を学ぼうとするあなたに比する愛情を自らの文化に持っているとは言えないように思います。フランスは今大きく変わろうとしております。そのすべての精神性とは関係のない世界になっています。私は心底フランスには幻滅しております。自らの運命を自らの手で決めることを止めてしまった国には全く魅力を感じません。あなた自身の存在にとって意義のあるフランスから目覚めを得ようとするあなたの試み、それを支える迸り出る生命の躍動と勇気が与えられますよう願っておりま す。

ところで、われわれの道行きが交錯していることにお気付きでしょうか。あなたは科学の世界から科学哲学という抽象的な世界へと向かわれています。つまり、あなたは「存在」の新しい理解につながる最も多様な基盤へと向うために、具象の世界から旅立った人です。あなたの年齢でそのような道に入られることに深い尊敬の念を覚えると同時に、私自身を広い思索に導いてくれます。反対に私の方は、抽象的な場所から現実に戻ることを決めました。ある意味では逃避の世界から具体的なものを作る仕事に就くことになります。それは私の青春時代の夢でもあったのです。私は40歳を前に哲学を辞め、具象の世界に生きる成熟を得たと思っています。

人生は不思議で驚きに溢れています。われわれの道行きの方向は重要ではありません。われわれがどんなに些細なことでも自らの最善を捧げて実現していくというその心の在り様こそ重要なのです。フランスがあなたに捧げてくれる最善のもの、そして私が移住することを決めたスイスが私にもたらしてくれる最善のものを期待したいと思います。

最後になりましたが、もしあなたがフランスに長く滞在されるのであれば、あなたを私の未来の祖国に招待したいと思っております」


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