今日からセミナーの方も始った。土曜の11時からという時間が丁度よい。ぼんやりしがちな土曜の朝を努めることなく外に誘い出してくれる。このセミナー・シリーズをオーガナイズしていた方(女性の生命哲学者)が先月亡くなったので、1分間のsilenceの後始った。今日の演者はアメリカ、デューク大学のアレックス・ローゼンバーグ氏で、この分野では有名な方である。スライドは英語だったが、フランス語で講演していた。テーマは発生遺伝学における還元主義についての疑義とそれに対する反論についてで、興味深い内容であった。
還元主義の定義を、分子レベルでの解析を重ねてゆくことにより、よりよく物事が理解され、その情報が加われば加わるほど真理に近づくという考え方として議論を進めていた。この考え方は、私も含めてほとんどすべての生命科学者が採っている立場ではないかと思うが、これで本当に全体の理解につながるのかという疑問が出されている。小さな部分の理解はどんどん進むが、それを集めたところで全体の理解につながるのかという疑問である。これはまさに私が経験したことそのものであり、少なくとも一人の科学者の中では到底その目的は達成できいないというのが私の結論であった。それが満たされないということは自らも満たされないことを意味したわけである。質問の最後に、科学哲学者がこの問題に対して何らかの回答を用意できるのかどうか聞いてみたが、これは相当に難しい問題になるだろう。
セミナー後、研究所に向かうメトロで同じM2のクラスにいるParis 7の学生さんに会った。彼もセミナーに出ていて私の質問を聞いて興味を持ったのか、こちらに寄ってきた。話をしてみると、これまで進化生物学について勉強してきたようで、文化(宗教も含む)における進化に興味を持っているようであった。Paris 7ではM2でも前期で4クール、後期3クールを取らなければならないようだ。こちらの場合はそれぞれ2クールなので、大学によってシステムが違うようである。これからも話が通じそうな印象を持った。
研究所のビブリオテクに行ったところ、なぜか閉館。セミナーの後で気分が解放されていたためか、そのまま散策に切り替えた。レンヌ街、ラスパイユ街を歩く。途中、ボサノバが流れていた(下の写真です)。のんびりした土曜の午後となった。
今日はラスパイユ街のにぎやかなカフェからアップすることになった。
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vendredi 9 octobre 2015
このセミナーで問題になった還元主義の問題は、簡単には片付きそうにない。これまでこの問題はいつもわたしの身近にあったが、そうではない方向性を考えるもののその方法論が見当たらないところがネック。状況は分析できるが解決の方法が見つからないというのが今でも続く現状ではないだろうか。
この記事出てくるParis 7の学生さんだが、その後オックスフォードに1年ほどいた後、オーストラリアで博士課程に進んだ。まだ院生なのか、卒業したのかは分からない。時は確実に流れている。
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